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青春を記す 早稲田1978'

 

鏑木詩集(1) 中期の作品

 

鏑木詩集(2) 過去作(初期)+海くんの肩もみ」(出版詩集)

 

鏑木詩集(3) 過去作(中期)+「無限逍遥」(十代の時の作品)抜粋

                              

鏑木詩集(4) 過去作(中期) 

 

鏑木詩集(アンソロジー) 過去作(中期~) 

 

鏑木詩集(新)  2015年~2023年の作品 現在更新中

                             

 

 

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波の名前                                                

 

                         

あなたが言った

または言うべきでなかった事柄も含めて

私は言葉の周辺で

いつも審判を下している

 

サンダル履きで

ねじれた石の階段を下りていく

夏の海の植物が素足に絡みつき

ほつれながらヘビのように退いていく

 

誰もが自分のことを語りたがっている

地表の上わずか数メートルの間で

起こり得る日常

誰の幸福 誰の不幸 その差異を語ることは

波のひとつひとつに

名前を与えることに似ている

 

遠くまで平らに均された真夏の海

明日のことも

一年後のことも

思い患うことのない姿

釣り人はリールを巻き上げる

水面から天空へとつながる言葉が聞きたくて

 

光を肩に乗せながら

抜き手はひらめく

声嗄らすことのない発声をもって

語られるべき正しい言葉は

まぶしさの向こう

白いマストの上に小さくぶら下げられている

 

海鳥の羽が風に舞いひとひらの白

その行方ほどの明日

次々と生まれ消えていく波に

もうあえて永遠の名を負わせない

 

あなたが言った

または言うべきではなかった事柄も含めて

私もまた波の名前を胸の中に揺らし

息継ぎと息継ぎの狭間をゆっくりと漂っている

 

 

 

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時間図

 

 

地図に載っている道を歩いているとき

わたしは安心している

迷うこともない

きっとどこかにたどり着く

 

駄菓子屋までの近道や

かたつむりの這っていた垣根の道や

草に隠れた石段も

確かに地図に描かれていたのだ

 

それと同じように

時間にも道筋があって

どこへ通じるのかは

だれかが持っている時間図に

ちゃんと記されているのだろう

 

既に記されているしるべの上にいると思えば

どの空間にいてもこわくない

自分の位置を

濃い影のようにはっきりと感じている

 

時間図には

恐れはここで終わると描かれ

悲しみはここで消えると描かれている

四角を抜け出して

今わたしは自由なかたちになった

この存在はすでに

地図に委ねられた旅だ

ゆっくりと確かめていけばいい

 

 

 

  

 

 

 

 

 

​今まで作成した詩集

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